今回は、三枝匡の「V字回復の経営」を解説していきます。
✔️ 31歳男性
✔️ 大手コンサルティングファーム勤務
✔️ 大手石油会社→ITスタートアップ→コンサル(現在)
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おすすめのポイント
- 組織再編コンサルの仕事がわかる
- 事業会社の変革プロセスがわかる
- 典型的な大企業の実態がわかる
それではさっそくいってみよう!
ストーリーのあらすじ
業績不振の大企業、太陽産業を再建していくプロセスをドラマティックに描いた作品です。
これはフィクションではなく、作者がコンサルタントとして関わった会社の実話を少しアレンジしているものです。
- 太陽産業(株)の香川社長は、業績不審のアスター事業部の赤字改善に苦戦していた
- 何をやっても改善しないので、遂に「改革の男」黒岩を子会社の東洋テックから呼び戻す
- 黒岩は香川に対して2年以内の黒字化を宣言し、コンサルタントの五十嵐と一緒に改革タスクフォースを結成する
- アスター事業部から集められたタスクフォースメンバーは黒岩の牽引のもと、激務のスケジュールで改革案を作成する
- 作成された改革案をもとに、黒岩就任2年目からドラスチックな組織変革と人事異動を実施する
- その後徐々に赤字幅は縮小し、2年目後半には黒字に転じ、改革は成功する
嘘みたいな成功ストーリーだけど、実話なんだね。カルロスゴーンによる日産の再建もこんなスケジュールだったみたいだね。
組織変革に向けたの9つのステップ
太陽産業の再建では、企業変革で踏むべき9つのステップに沿って改革が進んでいきます。
以下の図が9つのステップです。
- まずは黒岩率いるタスクフォースが結成され、ありたい姿=期待のシナリオを明確にします
- また、このまま何もしなければどうなるのか?という成り行きのシナリオも見える化します
- タスクフォースは、期待のシナリオと成り行きのシナリオとのギャップに強い切迫感を覚えます
- 今度は、なぜこんなにもギャップがあるのか?について、徹底的に原因分析します
- 原因分析の結果、判明した課題を解決するシナリオを作成します。
- ↑で作成したシナリオについて、決定権を持つ人(この本では香川社長)の承認を得て全社的な決断をします
- 次に、作成したシナリオを現場レベルに落とし込むために、支店巡回などで対象社員への説明を実施します
- そして、いよいよシナリオの実行です。ドラスチックな組織変革、人事異動を実施します。
- 実行後は成果を認知します。この本では事業の黒字化という形で成果を認知しました。
改革成功のポイント
太陽産業のアスター事業部が改革に成功した要因は、主に以下の4つです。
- 事業を捨てる覚悟
- 実行者による計画づくり
- 経営トップの後押し
- 気骨の人事
順番に解説していくね!
事業を捨てる覚悟
太陽産業が成功した要因の1つ目は、退路を断ったことです。
アスター事業部に就任した黒岩は、香川社長に対し「2年以内に黒字化させます。それが無理ならこの事業撤退してください」と進言し、香川はそれを受け入れます。
これまで事業の撤退はタブーとされてきており、それゆえに社員の危機感は薄かったのですが、最悪撤退の覚悟を持つことで本気度を示し、社員の気持ちを引き締めることに成功しました。
本気で改革を成功させるつもりなら、退路を断つことが必要なのです。
実行者による計画づくり
次に重要なのは、改革シナリオの実行者自身がシナリオの作成も実施したことです。
黒岩はまず、アスター事業部から気概のありそうな人材を集めてタスクフォースを結成し、黒岩の指揮のもと0から改革スケジュールを作成させました。
大企業の変革といえば、経営トップで実行プランを作成し、そのプランに沿って現場が実行していくのが一般的だと思います。
このやり方だと、実行部隊に危機感は生まれずモチベーションが高まることはありません。
大切なのは自らで現状の課題を把握し、その状況に対して強烈に反省することです。
この強烈な反省が改革のモチベーションにつながるのです。
経営トップの後押し
実際の改革では、経営トップが本気で後押ししているかどうかが成功を大きく左右します。
アスター事業部の改革においても、改革シナリオについて香川社長にプレゼンして承認を得たり、シナリオ実行の際は社長自ら講話をして覚悟を示しました。
このように経営トップが積極的に関わることで、「今度の改革は今までになく本気だな」という感覚を全員が共有することが重要なのです。
気骨の人事
最後に、改革が成功するためには前例や常識に囚われない人事異動や組織改革が必要です。
アスター事業部では、改革シナリオの実行で組織を変革し、製品群ごとにSBUという形で部署を分け、それぞれの部署に「SBU社長」というポジションを設けました。
このポジションは従来の組織では「部長クラス」なのですが、ここにタスクフォースメンバーから優秀な若手(40歳ぐらい)を登用しました。
今までの常識だと部長は50歳ぐらいが普通だったのですが、改革の際は常識に囚われず、だれが改革実行に最適なのかだけを考えることが重要なのです。
この本を読んだ感想
ぼくは2021年3月からベンチャー企業に転職することになったのだが、その企業からの課題図書としてこの本を読みました。
読んでみた感想は、ベンチャーに限らず会社で働く優秀な若手にはぜひ読んでもらいたいと思いました。
ぼく自身、大企業で若手として働いていて会社を改革していきたいと思っていましたが、①どうやったらいいかわからない②規模が大きすぎて改革は難しいという風に、ちょっと諦めていました。
「V字回復の経営」では実話にもとづいた大企業の改革プロセスが書かれており、「こうやったら大企業でも改革派できるんだ!」というヒントを得ることができます。
ですが、実際問題として若手がこの方法を知っても、実行に写すのは難しいのが現実です。
なのでこの本の気付きとしては、以下の通りです。
- どんな組織でも、探せば気概のある人はいる
- 抵抗勢力も説明の仕方を工夫すれば味方にできる
- とは言っても上司がしょぼいならやっぱり転職した方がいい
自分の部署に改革意識のある上司がついたらもうけもの。その人の右腕としてどんどん改革を実施することができます。
でも上司がしょぼいなら、早めに見切りをつけて転職してしまった方がいいです。
ビジネスパーソンの選択肢は「変えるか、染まるか、辞めるか」の3択です。
優秀な若手の方はぜひこの本を読んで、染まる以外の選択をしてもらいたいです。